スプリントトレーニングの有効性について~頭打ち打破の一つの方法~

長距離走の能力向上の為に、スプリントトレーニングを取り入れることは有効であることがすでに報告されており、長年トレーニングを積んできた選手にとっても有効であるとの報告がある。(1)
ジャックダニエル著のランニングフォーミュラーとしてRトレーニングとして、1500mのレースペースを上回るペースでのトレーニングが紹介されている(2)。

そこで、スプリントトレーニングは長距離走競技歴30年の40歳代の著者の競技力向上に有効かどうかを調べた。その結果、著者において10㎞のレースにおける前半5㎞のストライド長の増加による、パフォーマンスの貢献に寄与することがわかった。

検証方法:トレーニング内容の変化

スプリントトレーニングは10㎞のレースタイムより2022年度(4月始まりで起算し、2022年冬~2023年春)の10㎞の平均タイムより、ダニエルズフォーミュラーのRペースとして算出し、3:08/kmよりもはやいのペースでの走行距離として定義した。 

2023年度は週に1回、スプリントトレーニングを実施。7月以降もスプリントトレーニングを継続して実施した。年間通じてスプリントトレーニングを取り入れる前(2022年度)と後(2023年度)にそれぞれに出場した下記3レースの10㎞のレース結果を比較し効果を評価した。
(12月関東10Km,1月我孫子新春マラソン、3月佐倉マラソン10㎞)

トレーニングのイメージとしては2023年度は7月にスプリントトレーニングの量を増やし、8月に1km2’56のシーズンベストを記録。ロードレースシーズンに入った後もスプリントトレーニングを継続し、能力維持を実施した。典型的なトレーニング例としては1㎞+400m+200m+100m(r5分)など段階的に距離を減らしてスピードを上げる練習や800m、400m、200m、100mのリピート練習を実施し、一回のスプリントトレーニングの走行距離上限が3㎞以上にならないように設定した。

結果:                                            10㎞のレースタイムの短縮(36秒 1.70%の改善)を実現することができた。特にレース前半の5㎞のタイム短縮がレース全体のタイム短縮に寄与していることが分かった。

成績向上の要因の分析を調べるためピッチとストライドの改善について比較した。その結果、ピッチ、ストライドともに改善しているが前半の5㎞のストライドの改善(4.45cm 2.98%の増加)が顕著にパフォーマンスの向上に寄与していることが分かった。

結論:
 スプリントトレーニングにより, 10㎞のレースの前半5㎞においてストライド長を増加(4.45cm 2.98%の増加)することができ、10㎞のレースタイムの短縮(36秒 1.70%の改善)を実現することができた。

今後のパフォーマンス改善への気づき(今後の課題)

①8月以降はスプリントトレーニングによる1㎞のタイム短縮は起こらず、トレーニング効果としては維持に寄与する程度であった。(トレーニング効果の頭打ち)

②スプリントトレーニングを実施することで走行距離、I-Tペース(インターバルやペース走)のトレーニングの量が若干へらした為、後半の粘りに影響した可能性がある。(トレーニングバランスの最適化)

これらを打破する為のトレーニング方法については今後の検討課題としていきたい。

参考文献:

(1)https://sports-sciences.fit/endurance-training-9/
(2)https://vdoto2.com/calculator/