アロマを活用した回復強化

 自律神経のバランスを整えることは、近年スポーツ業界においても重要であることは指摘されており、メジャーリーガーを始めとして多くのアスリートが自律神経のモニタリングと調整を実施している。

マラソンや長距離においても例外ではなく、東海大学の箱根駅伝出場選手の調整過程の自律神経の調査と、本番当日の結果に関する論文1)や青山学院大学の選手へのメンタルサポートの実施2)など研究や実践を行っていることが報告されている。

また、睡眠は体や精神を回復させるために非常に重要な役割を果たしているが、自律神経のバランスが不安定になると睡眠の質が悪くなることは広く知られている。そこで、自律神経のバランスを整えるための手法を実施し、その効果を自律神経のバランスと睡眠の質が向上するか筆者自身が試み,分析してみた。
 
■アロマの活用
 アロマセラピーの自律神経に与える効果は広く知られている。また、アロマセラピーは睡眠の質を改善させるという2000年から2013年までのデータをまとめた論文が報告されている。3)今回、AEAJ認定アロマテラピーインストラクターのSACHIKOさん*にご協力いただき、筆者個人がアロマを使用し、自律神経のバランスを整えること及び睡眠に与える影響を調査した。
*ブログ:daysandaroma.exblog.jp
Instagram:DAYSANDAROMA

1.アロマ の検証試験方法
 著者の嗜好に併せて独自に配合を頂いたアロマを数滴睡眠前にコットンにつけ、枕元に置きにおいを感じる環境下で就寝した。睡眠は、20時30分就寝~4時30分起床(前後30分の誤差有)となるようにした。2022年10月26日からの連続35日間実施し、7日ごとにアロマの使用なし、ありを繰り返してデータの集計を実施した。効果の測定は、自律神経のバランスに関しては起床時にHRVをアプリで測定することで得られたデータを元に分析した4)。睡眠の質に関しては、Smart Watch Garminの機能であるSleep Scoreを参考に評価を実施した5)。

2.結果
交感神経のバランス、及び睡眠の質は1~100のスコアで評価し、枠で囲った8~14、22~28日の間にアロマを使用し睡眠をとった(図1)。                                            

自律神経バランス及び睡眠の質(Sleep Score)をアロマの使用の有無により分け、比較した。(図2、3)

3.結論
図2より、就寝時にアロマを使用すると、使用しなかった場合と比較し、自律神経バランスに関しては、日による変動が少なくなり、副交感神経の優位の方向に進む傾向があると考えられる。図3よりまた一方、睡眠に関しては、質は改善される傾向にあるものの、日による質のばらつきには、大きな差がみられなかった。
 自律神経バランスは環境によりすぐに変化が現れるのに対し、睡眠の質は、複合的要因により変化することが知られており6)、そのことが影響しているかもしれない。
 図1より 自律神経バランスに関してはアロマの効果は1週間経過後、下落していく傾向があった。連続して同じアロマを1週間以上使用すると慣れの影響で効果が出にくくなる可能性も示唆された。SACHIKOさんより、アロマを複数種類持って置き、その時に心地よい香りを選ぶとするのも良いのでは?との提案を頂いた。睡眠を促す香りとしては、ラベンダー、カモミールローマン、マンダリン、スイートオレンジ、スイートマージョラム、サンダルウッド、ネロリ、イランイラン等々が知られており、さらなる効果を今後検証していきたい。
 以上のことより、著者の場合、就寝時のアロマの使用は、1週間の使用で、副交感神経の活動を促し、日による変動を少なくし、睡眠の質を改善させることができることがわかった。                                              

4.参考文献                                                      1)http://www.sms.u-tokai.ac.jp/publication/magazine/doc/ttj_of_sms_28/p051-p057.pdf
2)勝てるメンタル  著者 原晋、根来秀行、発行 株式会社KADOKAWA
3)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25584799/
4)https://elitehrv.com/
  https://elitehrv.com/what-is-heart-rate-variability
5)https://www.garmin.co.jp/minisite/health/guide/sleep/
6)不老長寿メソッド 著者 鈴木裕 発行 かんき出版